サザン芸術花火の減免について part.2

住民監査請求が出される

サザン芸術花火2019 を開催するためのの占有料 約5000万円を茅ヶ崎市が全額減免したことについて、令和2年10月に住民監査請求が出された。

請求は受理されたが、監査の結果は請求を棄却するというものだった。

茅ヶ崎市では、漁港区域内の占用料については、茅ヶ崎漁港管理条例第12条第4項により「特別な事由があると認められるとき」に減免ができると定めている。

「特別な事由があると認められるとき」に該当する場合とその減免額については、茅ヶ崎漁港管理条例等施行規則第17条第1項各号に定めている。 

そして、茅ヶ崎漁港管理条例等施行規則第17条第1項第3号の「市長が特に認めるとき」については、茅ヶ崎市行政手続条例第4条第1項の規程により審査基準を設定していて、そのなかで「国又は地方公共団体が後援し、かつ、営利目的でない事業のために占有するときは、占用料の全額を免除する」という基準を設けている。

市は「営利目的でない」ことを証明できる根拠を持っているのか?

市監査は、「請求人(市民側)から提出された資料などからは、事業が 営利目的であることを証する明確な根拠は確認できなかった」として請求を棄却した。

しかし、それならば、逆に市もまた「営利目的でない」ことを証明できるような明確な根拠を持っていない。



監査も明確に確認できていない

市監査は、「請求人(市民側)から提出された資料などからは、事業が 営利目的であることを証する明確な根拠は確認できなかった」としている。

では、逆に、市監査はどのようにして「営利目的でない」と明確に確認できたのか?

それについて、市監査は関係職員に事情聴取を行い、

①後援名義の使用決定にあたって申請書が提出された際に、企画概要書と収支計画書を確認した。

②申請者にヒアリングを行ったうえで事業が営利目的であるか否かを判断した。

③事業実施後に、収支報告書などの書類とヒアリングにより事業内容を確認した。

こういったことから、サザン芸術花火2019 が営利目的であるという事実は確認できなかった、としている。

しかし、Part.1にもあるように「営利目的でないことの確認のために、市が実行委員会へのヒアリングを行ったやりとりの内容記録」を求めると、市からは「文書を作成していないため、文書は不存在」という回答が出て来る。

つまり、いつ、誰と誰が、どういった内容の話し合いをして営利目的でないと確認したことの分かる文書は作られていない。

監査は市民に対して「営利目的であることを証する明確な根拠は確認できなかった」と言うが、監査もまた「営利目的でないことを証する明確な根拠」は確認できていないことになる。

口頭で職員から説明を聞いたに過ぎない。

監査委員に不服審査請求が出される

では、いったい監査委員の中で、どのような話し合いの経緯があって「営利目的でない」と監査は判断したのか?

そのために「サザン芸術花火が営利目的であるか否かの確認のために、監査委員がどのように調査・聞き取りなどを行ったのか」などが分かる内容記録(逐語録など)を求めると、「文書は不存在」という回答だった。

監査委員が発言記録を作成していない(そのため文書が存在しない)ということになる。

「住民監査請求への対応については、監査委員の合議により監査結果の通知をもって請求人に示すもので、その性質上、監査の過程に関する各委員の発言記録を作成することになれば、協議での率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるので、監査委員協議のうえ作成しないものとしている」

というのが、監査から出された「文書を作成していない理由」だった。

そして、監査委員が発言記録を作成していない(そのため文書が存在しない)ことについて、不服審査請求が出された。

条例は「意思決定の経緯の分かる文書を作成しなければならない」

茅ヶ崎市行政文書管理規則第6条には、

「事務処理にあたっては処理の内容(意思決定の経過及び行政文書を管理するために必要な事項を含む)を記録した行政文書を作成しなければならない。

令和3年4月から施行された、茅ヶ崎市公文書管理条例第4条には

「第1条の目的(市の有する諸活動を現在及び将来の市民に説明する義務が全うされる等を目的とする)達成に資するため、当該実施機関における経緯も含めた意志決定に到る経緯並びに事務及び事業の実績を合理的に裏付け、または検証することができるよう、文書を作成しなければならない」 

としている。

審査会は、監査委員が文書を不存在として非公開決定としたことを妥当と判断したが、審査会からの付言では

「監査委員の作成した協議結果の「概要」は、議事の内容が相当簡潔に要約されていることがうかがわれるので、この程度のものでは十分なものとは認められない。意思決定に至る過程を合理的に跡づけることができるような記載内容とすることを望む」 

ということで、作成された文書内容が少なすぎて十分ではない、意思決定に至る過程を跡づけることができるような記載内容を作成するようにしなさい、というものだった。


柳島スポーツ公園、うみかぜテラスも同様

茅ヶ崎市が審査会から、

①議事の内容があまりに簡単なまとめで、十分なものとは認められない
②意思決定に至る過程が明確にわかるような記載内容とすることを望む

と付言を受けたのは、今回が初めてではない。



柳島スポーツ公園のPFI 事業者選定委員会でのケース

審査会が確認したところ、

PFI 事業者選定委員が入札での採点を書き入れた原本は、採点後ただちに職員が採点結果表に入力し、入力内容を選定委員に確認を行った直後に廃棄した ことが分かっている。

総合評価方式の入札でPFI 事業者を選定する委員会での議事録が、あまりにも簡単な内容しか残っていない(入札採点当日の議事録はない)ことは、市民にも広く知られている。 

入札の議事録がほとんど残っていないことについても、審査会から「選定委員会は大規模なPFI 事業について、事業者選定の中核的な役割を担っていたのであるから、その形式はともかく、審議の過程を確認できるような内容とするのが望ましい」と付言されている。



うみかぜテラス建設時にテニスコートを移設したケース

うみかぜテラスをどこに建設するかは、福祉会館との兼ね合いもあり、周辺住民にとっても重要な案件だった。

ところが、テニスコートを移設して、そこにうみかぜテラスを建設することがいつのまにか決まっていて、決定の経緯を示せる文書が作成されていなかった。

この文書の不存在についても、審査会から「市政を市民に説明する責務をまっとうし、市政にたいする市民の理解を得るためにも、意思決定の過程も含めて行政文書を作成するように」付言されている。

茅ヶ崎市は経緯が明確に分かる文書を作成しない、という同じことを何度も繰り返している。

市議会が厳しく経緯をチェックしないから、行政が文書を作成しないで済ますという繰り返しになる。市民はたまったものではない。  


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