税金で大判振る舞い?
①民間企業の資金とノウハウを利用してコスト削減する
②市民に提供するサービスの向上
をお題目に、市は柳島スポーツ公園事業に PFI方式 という新たな事業方式を採用しました。
結論から言うと、PFI方式のお題目は空手形の大失敗でしょう。
柳島スポーツ公園の設計費、建設費、20年間の維持管理費、運営費に加えて、土地の購入費、周辺道路整備費などを加えた事業費総額100億円超はすべて市の負担です。
しかし、PFI方式では、公共施設利用料やイベント収入などは、駐車場料金も含めて、すべて亀井工業ホールディングスグループ(以下亀井工業HDG)企業が出資して設立した特別会社のスマートウェルネスパーク㈱(以下SPC)の収入となります。
SPCは市と業務契約を交わし、業務別に亀井工業HDG企業に業務委託をし、市が建設した競技場やテニスコートをただで利用してあげた利益の一部を出資者に配当金で分配し、残りは自分に入れます。柳島スポーツ公園事業はリスクがほとんどない、願ってもない宝の山でしょう。
一方の市は100億円を超す税金で大規模投資をしても利益ゼロです。そのうえに数10年後に施設が老朽化すれば、大改修が必要となります。市は市民の税金を使って大判振る舞いする、なんとお人好なのでしょうか?
施設の運用権はSPC に
では、これを一つ一つ見ていきましょう。
柳島スポーツ公園は市民のための《公共施設》ですが、実態は事業者の亀井工業HDG企業の利益を追求する事業資産として使用されています。
SPCは施設の運用権を握っており、施設の利用料を他の公共施設より高く設定できます。市が出来ることは、亀井工業HDGと取り決めた料金の上限を超えていれば、引き下げを要求できることぐらいです。
このような契約条件になっているので、駐車料金には他施設のような2時間の減免はなく、また料金は上限に張り付いています。契約有効期限までに16年もあるので、この期間に公共施設並みの料金体系に変更は期待できません。
また、SPC には、総合競技場とテニスコートを優先利用できる割り当て枠があります。
平日は3分の1、土日・祝日は4分の1 までを優先的にSPCが自分の事業に使用できます。それとは別に、市のイベントや市の協会などが優先利用します。年度始めに市とSPCが協議しているといっても、誰もが利用しやすい土日・祝日の昼間の時間帯を先に抑えてしまうので、一般市民には使いづらい曜日と時間帯が割り当てられます。
これはPFI方式の大きな反省点です。
事業収益が期待できる公共施設にPFI方式を採用すると、公共施設ではなく、事業者の利益追求の事業資産として利用されるということです。
コスト削減効果は疑わしい
それでは、柳島スポーツ公園事業は、従来方式に比べてPFI方式によるコスト削減の効果はあったのでしょうか?
これは、とても重要なことです。コスト削減がないならPFI方式を導入する意味がないからです。
結論として、市からの情報が不足している(市が検証をしていない)のですが、答えはノーに近い「極めて疑わしい」になります。
その理由を以下に述べます。
①市は、PFI方式による各業務の一括発注によるコスト削減の具体的な算定方法と削減額を示すことは出来ない。
②一般的に、事業者の金融機関からの借入金利は、市より信用力の評価が劣るため、市より数%高くなる。事業者はこの高金利をもとに市に費用請求するので、市は長期の市債金利 約0.6%よりかなり高い利息を支払うことになる。
③ 従来の市の直営による委託方式に比べると、SPC費用が余計に発生する。通常SPC は事業リスク保険を抱えるので、費用の中に加える必要がある。
④従来の委託方式では、収入は全額市の収入となり、費用から収入を差し引いた実質的な費用負担は少なくなる。
⑤従来方式による市のコスト計算は、支払い時期に関係なく実際に支払う金額を用いる。PFI方式では、繰り延べて支払う金額を現在価値に割り引いた金額で比較する。割引には支払い時期までの期間に得られる利息を用いる。利息計算には、現在から支払い時期までの長期の金利の動向を正確に予測しなければならない。これは至難の業で、実際の金利動向と大きな乖離が生じれば、コストメリットがない事業でもコストメリットありと判定されるリスクがある。
⑥VFMは、計画決定に重要な役割を果たす。
市は最近割引率を4%から2%に、VFMを6%から4%に下方修正した。従来方式での事業収入は全額市に入るため、PFI方式でのSPCの費用や高金利による利息負担増などを加味した現在価値の修正いかんでは、従来方式の方が有利として選ばれる可能性も十分にあった。
このような問題を抱えているPFI方式は、大きなリスクがあると思いませんか?
現在価値によるコスト比較は行政の立場からの屁理屈に過ぎません。私たち市民に対して「納める税金は現在価値に直して計算すると少なくてすむんですよ」と言っているようなものです。
税金を納める私たちに市民にとって、現在価値と言われてもそれは行政の立場からの言いわけにしか聞こえず、全く実感が湧きません。市民が他の公共施設並みの安い料金で、市民にとって使いやすい公園にして欲しいと、言いたくなるのはもっともです。
方式の採用 おおいなる矛盾
市は「粗大ごみ処理施設」の建替え事業には、PFI方式に類似する DBO方式 の採用を決定しています。これは、PFI とは逆に、市の自己資金で施設を建設することを前提としています。
しかし、不可解なことに、DBO方式は柳島スポーツ公園事業方式の検討では、最もメリットが低いとして外されているのです。
市の財政状態は、令和2年に「財政健全化緊急対策」を発表するほどで、柳島スポーツ公園事業の契約を結んだ平成26年に比べたら、さらに厳しさを増しているはずです。そのような財政状況なのに、なぜメリットが低いとした DBO方式を採用したのでしょうか?
また、市は PFI方式を採用しない理由に、「事業者の請求する利息が高い」ことを挙げています。
これを裏返せば、柳島スポーツ公園事業のPFI方式ではコスト削減のメリットはない、ということでしょうか?
もし、DBO方式が PFI方式と同じように、事業者に施設の運営権を譲渡するのであれば、粗大ごみ処理施設は事業者の利益追求の事業資産として使用される懸念はないのでしょうか?
いずれにしても、PFI もDBO も運営権を事業者に譲渡するため、柳島スポーツ公園事業のように事業収入が市民に公開されず不透明になります。私たち市民は、DBO方式ではそのような不透明さがないように、市に見直しを要求する必要があります。