茅ヶ崎財政 「何でこんなに厳しいの? 」オンブズマンが解説  

何度も耳にする「市の財政は厳しい」「財源が足りない」

ちがさき市民オンブズマンは、2015年の発足と同時に「Stop the ハコモノ行政!」のブログ記事など、財政リスクに危機感を持たない行政と議会に警鐘を鳴らしてきました。(今でもよく読まれています。)

その4年後、2020年1月に、市は「財政健全化緊急対策案」を出さざるを得ないほどの厳しい財政状況に追い込まれ、私たちの心配は現実となりました。

今では、行政の説明に「市の財政は厳しい」「財源が足りない」が必ずついてくる状態です。

ではいったい、何が原因でこんなに厳しくなってしまったのでしょう?

オンブズマンが市議会議員 杉本けいこ と共に分かりやすく解説していきます。


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特集 茅ヶ崎市の財政 何でこんなに厳しいの?  

市の財政は豊かと思っていませんか?

「県内16市・市民一人当たりの市税負担の状況」というデータがあります。

茅ヶ崎市が自分で得ることのできる収入のほとんどは市税で、市民税(個人・法人)や固定資産税などを合計したものです。

市税を人口で割ったものが「市民一人当りの市税負担」で、その金額が多いほど市の財政状況は豊かという目安になります。

茅ヶ崎市は、県16市のうち12位。(令和元年度)

市内に企業が少ないため法人税は市税の4%とわずかです。

ちなみに上位トップ3は、厚木市、鎌倉市、藤沢市。

さらに、「市民一人当たりの一般会計歳出」を見てみましょう。

市の1年間の支出が「歳出」で、市民一人当たりに使っている金額は、茅ヶ崎市は16位(約30万円)と毎年のように最下位です。

なんとなく、茅ヶ崎のイメージから財政は豊かであると思っていませんか?

収入は増えないのに、支出や借金は激増・・・

10年前と比べてみると、令和元年度の市税収入は横ばい状態で20億円増。
その一方で、一般会計の歳出は733億円で、117億円増えています。

収入が20億円増えても、支出が117億円増えたのでは、当然お財布は苦しくなります。

支出が増加しているトップ5は、扶助費、普通建設事業費、物件費、人件費、補助費です。

①「扶助費」194億円

子ども手当、保育所の運営、小児医療費の助成、生活保護費など福祉的な費用です。10年前には104億円だった扶助費が、令和元年には194億円と100億円近い激増です。

②「普通建設事業費」 106億円(平成30年度)

平成27年度は103億円、平成30年度は106億円と、
過去最高額に達しています。 
市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修など、建設事業に使っています。
この財源として発行した市債(借金)の返済がこれから本格化していきます。(財政が厳しい大きな理由です) 

③「物件費」103億円

施設を建設すれば、維持管理の費用も増えます。(目に見えないけど財政を厳しくしています。)
いったん公共施設を作れば支払い続ける費用です。施設をあれも、これも作れば市民にとっては便利かもしれません。しかし、同時にそのツケも必ず回ってきます。とうとう100億円の大台に乗りました。 

④市長・職員・議員の「人件費」141億円

平成29年度に145億円と過去最高額を記録し高止まりの状態です。職員数は10年前の1857人から、令和2度には2262人へと405人増加しています。 

⑤「補助費」87億円

増加する一方の補助金 が市の財政を圧迫しています。あれも、これも補助金をもらう、そのツケも回っています。市民生活に何が本当に必要な補助金なのか、見直しが求められています。


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自由に使えるお金はありません(経常収支比率)

市税のように使い道が自由な収入のなかから、借金の返済(公債費)、人件費、扶助費、物件費など必ず支払わねばならない費用(義務的経費)に使う割合が「経常収支比率」です。

平成元年度の茅ヶ崎市の経済収支比率は、とうとう99.4%という、かつてない厳しい数字 になりました。この数字が高くなるほど余裕がない状態となります。 


財政難は新型コロナ感染が原因ではない 

昨年1月、市は記者会見を開き、これから続く厳しい財源不足に対応するため「財政健全化緊急対策」案を発表しました。

これは、新型コロナ感染が拡大する前 のことです。

つまり、新型コロナ感染の影響前に、すでに市の財政は未だかつてない厳しい状態に追い込まれていたのです。

では、なぜそこまで追い込まれたのでしょう・・・? 

普通建設費の大幅な増加 が原因です。
 
市は財政の厳しい理由として、次の2つをあげています。

①扶助費の増加
②市債(借金)の返済額の増加

①の扶助費の増加は、茅ヶ崎だけでなく全国的な傾向です。
そして、財源としては、国・県からの支出金も入ります。

②の市債(借金)の返済額の増加となる原因は、「普通建設費の大幅な増加」です。これが茅ヶ崎市特有の財政難の原因です。


平成26年〜平成30年度の5年間に普通建設費が大幅に増加して、この5年間の合計は447億円となり、平成30年度は106億円と過去最高額に達しています。

市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修などで「普通建設費」が大幅に増加しました。


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上の表は、見えにくいと思いますが、黄色い部分が「普通建設費」の推移です。(表の上のほうで黄色が増えています。)

その左隣のピンクが「公債費」で借金の返済額ですが、これは増えているわけでない。つまり、借金を増やしたけれど、まだ返してないのです。

そして、過去最大額となった「普通建設費」の財源となるもの・・・
それが 市債(借金)です。


下の表は「市債発行額の内訳」です。
ブルーの部分が、建設事業費の借金分です。

普通建設費が増加した5年間と、市債発行の増加した5年間が、同じタイミングなのが分かります。

特に普通建設費が106億円と過去最高額になった平成30年は、過去最高額の市債発行です。
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借金の返済額がこれからピークに!

借りたお金、使ったお金は「返さねばならない」のが現実。

では、いつ返すのか・・・?

「これから!」なんです。 

これから借金の返済額が、毎年60億円に急増し、高止まりのまま10年支払い続けていくことになります。
市の財源も毎年数十億円が不足して、次の世代に手痛いツケとなります。

市税が大幅に増えることは期待できない

コロナ感染の影響で市税収入はダウン

借金の返済額がこれからピークを迎える


この3つが重なるのですから、新型コロナ感染の影響で約22億円の市税収入のマイナスが見込まれる令和3年度は、過去に例がない厳しい予算編成になります。

市長公約も例外なく見直しを迫られています。

① 道の駅のオープン 令和7年に延期を決定。
② 中学校給食の実施は未定。
③ 総合計画(実施計画) 作成を2年間先送りする。
財源の裏付けが取れないためで、今後2年間はコロナ感染の影響や経済情勢などを見ながら事業方針を定める。
市立病院 コロナ感染でさらに厳しい経営状態となり、この先、経営形態を変えるのか?

来年度のごみの有料化 の実施にともない、コロナ感染の影響もあり「戸別収集」を実施してほしい声が高くなっています。
 
多くの予算や人的資源をコロナ関連事業に費やすという、これまでと違う市政運営が続き、どの事業を優先とするか、非常に厳しい「優先順位」をつける作業の連続になっています。


《オンブズマン レポート後記》

令和3年度の予算委員会では「新型コロナ感染の影響で市税が減収し、財源が厳しい」という行政側からの答弁が目立ちました。

でも、それは違うと思っています。

オンブズマンは、このままの市の財政運営では必ず危機を迎えると行政や議会に伝えてきました。令和元年の市議会議員選挙で、公約に「財政運営の転換」を入れたのは初出馬の杉本けいこ議員だけでした。

行政も議会も、ほとんどは財政に危機感がなかったのです。

昨年1月、市は「財政健全化緊急対策案」を発表しました。これはコロナ感染の広がる前です。

「新型コロナ感染の影響で市税が減収し、財源が厳しい」のではなく、すでにその前に追い込まれていました。 

今、市の財政課は、一度、棚に押し込めたものすべてを外に出し、必要なものを棚に戻す・・・断シャリのようなことをしています。

コロナ感染の影響で生活の価値観が大幅に変わるなかで、優先順位として市が何をピックアップするのか、何を棚に戻すのか。

財政難を理由にして、市民サービスの質の低下はあってはならないことです。

「みどりや公園の保全」についても大きな懸念を持っています。特に市街地では、みどり豊かな安らげる空間が求められているのに、残せない茅ヶ崎市。

公園とみどりが県で最低レベル、それは同時に災害時の空間が確保できていない街を意味しています。


茅ヶ崎市議会議員(無所属) 
杉本けいこ

1959生 松浪小・松浪中 
県立鎌倉高校(父の転勤のため福岡・筑紫女学園高校卒業)
武蔵野美術大学 造形学部油絵科 卒業

テニス歴40年
ちがさき市民オンブズマン 設立(2015)代表理事


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