県は「広域避難場所」を見落としていた?
県は、茅ヶ崎ゴルフ場を経営してきた観光日本(株)への賃貸料9200万円を、2億円に値上げ要求しました。
県は、バブル期のような2億円の賃貸料を、地価に見合った適切な金額としています。このことが、観光日本が茅ケ崎ゴルフ場運営から撤退を決意した一因となりました。
県は厳しい財政対策の一環として、ゴルフ場の利活用によって、賃貸料の引き上げによる収入の増加や、一時的な県有地の売却収入をもくろんでいますが、担当の財産経営課には決定的な誤算があります。
茅ヶ崎ゴルフ場利活用について、関連ある他の部局との横断的な取り組みを行わなかったため、茅ケ崎ゴルフ場が担う「広域避難場所」としての機能を見落としていた、としか考えられないのです。
茅ヶ崎ゴルフ場には、県有地の全面積に匹敵する12万㎡の「広域避難場所」の確保が必要です。
「活用できる面積の県有地がない」ことを事前に知っていれば、このような無謀で無意味な利活用を考えることはなかったでしょう。
知ったときは、すでに計画が走り出していて、あと戻り出来ない状況にあったため、「無理が通れば道理が引っ込む」とばかり、強引に事業者提案を行ったというのが実情ではないでしょうか。
茅ヶ崎ゴルフ場は市民6万人の「広域避難場所」
市と事業者に安全責任を転嫁する県
県の財産経営課は、茅ケ崎ゴルフ場内の広域避難場所の安全面積を6万㎡に縮小して、残りの6万㎡を事業者の利益に活用できるよう、県・市・協同の3者会議で、安全基準の変更を市に要求しました。
科学的に安全を確認しないまま安全基準を変更すれば、行政訴訟、損害賠償請求訴訟などによる住民の反発の矛先が、県に向けられることを警戒しているのでしょう。
安全基準の変更を市にやらせて、市への責任転嫁を考えているとしか思えません。
市の担当課は「県が安全基準を変更すれば、市もこれに倣って変更する」として拒否しています。
県と茅ヶ崎協同は、市の了解を得ないまま見切り発車して、「茅ヶ崎ゴルフ場の周辺地域に、事業者が不足面積の広域避難場所を確保することを条件」に、事業者募集要項や事業者との Q&A で6万㎡を認めています。
ここでも事業者に安全確認を転嫁しようとの県の意図が感じられます。
★東急電鉄と電通の事業提案では、何と134号線の「砂防林」が広域避難場所に指定されています!!(2016-8-12)
事業推進における県の誤算
仮に、県が安全基準を変更して(あってはならないことですが)、6万㎡の県有地を事業者の活用に提供できたとしても、9200万円以上の賃貸収入を得ることはできません。
県が今年3月末に発表した、ゴルフ場土地の鑑定による貸付参考価格は、¥1140/㎡。
6万㎡の賃貸収入は6840万円。
これに数百万円のゴルフ利用税を失うので、9200万円より約3000万円の減収となります。
それではこの利活用計画の本来の目的である、財政対策としては意味をなさないので、土地売却収入で補うことになります。
ところが、県は「県有地は原則貸付、売却は宅地用のみ」と事業者に答えています。
事業者募集要項では、300戸以上の住宅提案に対して減点評価となっています。最大6万㎡の半分、すなわち県有地の4分の1を宅地用として売却しても、売却参考価格の¥53530/㎡に基づく3万㎡の売却収入は16億円と少なく、財政上の効果は一時的かつ限定的です。
さらに、茅ヶ崎協同が住宅地として売却する予定面積はまったく不明のままです。
「みどりなど関係ない」という姿勢の県
茅ヶ崎ゴルフ場は、
☆県 ⇒「みどり計画」でなぎさ緑化域に指定
☆市 ⇒「みどりの基本計画」で、みどりの保全配慮地域に指定
開発によって、周辺住民の安全を犠牲にするばかりか、茅ヶ崎ゴルフ場のみどりや景観を破壊し、134号線に通じる道路建設のために、砂防林の指定を解除してまで松を伐採し、事業者募集要項にもとづく土地活用事業を推進する意義は見出せません。
この点について、県の担当職員の意見を求めたところ、
「本件の私たちの職務は県有財産の処分であり、経済的なことや防災、みどりの保全などには関係ありません」
との半ば破れかぶれの回答で、かなり追い込まれた状況に置かれているとの印象でした。
市も同様に、年間億円単位の経済的な負担を抱えることになり、茅ヶ崎ゴルフ場を存続する場合に比べて利活用のメリットはありません。
茅ヶ崎ゴルフ場の存続に消極的であった市長にとっては、想定外のことと推測します。
これについては、次回で触れることにします。